報国寺を「竹と苔のお寺」に!
報国寺は鎌倉を代表するお寺の一つで、特に竹林の素晴らしさで知られています。
ですが、実は苔についても素晴らしいお庭を持つお寺で、鎌倉の苔を紹介する書籍等でも必ずと言っていいほど取り上げられるほどです。
ですが近年、苔が大きく枯れ上がってしまうところや、ゼニゴケ類に覆われてしまう部分がかなりの部分を占めるようになっていました。
報国寺さんとしても、お寺全体の苔をしっかりと管理したい、との思いを持っておられ、ご縁もあり、苔の管理担当として依頼をいただきました。
報国寺を「竹の報国寺」ではなく「竹と苔の報国寺」に!、という目標のもと、プロジェクトを進めています。
もちろん、全てを私がやっているわけではありません。
苔の管理は毎日の落ち葉の除去から、定期的な雑草、ゼニゴケ管理まで行わないといけませんが、流石に毎日自分が入るわけにもいきませんので、日々の落ち葉除去は庭師さんが担当しています。
雑草についてはしっかり苔の施工を行うとそれほど生えてきません。
草取りが減るだけでも、だいぶお庭全体の作業は省力化できると思っています。
ゼニゴケも苔、と言えばそうなのですが、一般的には美しいとはされず、極力ない状態が良いとされます。
鎌倉はゼニゴケ類がとても環境に合っているのか、放っておくとゼニゴケ類(ジャゴケやフタバネゼニゴケ、ケゼニゴケ等)に覆われていく(他の苔が駆逐されていく)ことが多いため、庭を維持する方には悩みの種になっています。
ゼニゴケ類を取り除くのも庭師さんの大きなお仕事になりますが、広がってくると完全に手に負えなくなります。
枯れ上がった場所、ゼニゴケ類に覆われた場所は苔の張り替えを行います。
張り替えを行う場所と、うまく必要な苔だけを活かす工夫をすることで対処する部分を使い分けつつ進めています。
苔を貼ること自体は難しいことではないでしょう?と思われるかもしれません。
たしかに貼るだけなら難しくはありません。
ですが、見せられる苔を維持する上ではさまざまな課題が出てきます。
・モグラ(鎌倉は非常に多い)が穴だらけにする
・鳥獣に荒らされる
・毎日かけるブロワー(落ち葉を飛ばす)で苔が飛ばされ劣化していく
・菌にやられる
・人に踏まれてしまう
・ゼニゴケ類が増えてくる
たとえ環境にあった苔を貼ったとしても、ぱっと思いつくだけでこれだけの課題が出てきます。
これらの課題をクリアする苔の施工をするのが私の仕事です。
そんなプロジェクトも開始から3年近くが経ちました。
苔をしっかり美しい状態で保ってあげると、明らかに観光客の方の反応が変わります。
横に見事な竹があるにもかかわらず、下を向いて苔の写真を撮っている方のなんと多いことか!
「苔がきれいね〜」という声も、本当にあちこちから聞こえてきます。
とてもうれしいことです。
苔なんて放っておけばよいと思われがちですが、ある程度の管理も必要です。
ですが、芝生にはない、苔そのものの美しさ、それに景観を引き立たせる力、そして空気感を作る力があります。
少なくとも鎌倉は、苔が育ちやすい環境にありますから、ぜひこの苔の力を活用してほしいと思っています。
報国寺については引き続き、経過報告をしていきたいと思います。
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