ヒノキゴケの特徴、植え付け方、育て方について
ヒノキゴケについてまとめました。
適宜加筆修正していきます。
ヒノキゴケの特徴、植え付け方、育て方について
学名 | Pyrrhobryum dozyanum |
別名 | イタチノシッポ |
分布 | 本州〜琉球、朝鮮、中国(平凡社 日本の野生植物より) |
サイズ | 5センチ〜10センチ |
苔テラリウム内での用途 | 生い茂る木々を表現できる大型の苔 |
育てやすさ | ★★★★★ |
増えやすさ | ★★★★★ |
注意点 | 乾燥に弱い |
苔の中では比較的大型の苔です。
テラリウムとの相性が非常によく、植えやすく育てやすいため、初心者向けと言えるでしょう。
ふさふさとした毛並みのような姿が美しく、テラリウムには欠かせない苔です。
(大型の苔は他にカサゴケ、フジノマンネングサ、コウヤノマンネングサ、フロウソウがあります)
ヒノキゴケの生態
自然環境ではヒノキゴケの新芽は秋〜冬頃から生え始めます。
目に見えて新芽が生えてくるのは梅雨頃になるでしょう。
秋〜冬頃に生えた新芽は、尖った針状のため、見落としてしまうことも多いのでじっくりと観察してみてください。
ヒノキゴケの展開した葉は環境にもよりますが、厳し目の環境(照度が強い、乾燥しやすい等)では冬には老化します。
ヒノキゴケが赤褐色になるため株全体が枯れてしまったように見えます。
ですが、翌春頃から新芽が広がり始めることで、また青々とした株に戻ります。
適した環境では、新芽が広がるまでの間もしばらくは青々とした緑を維持し続けます。
ヒノキゴケは緑→黄色→赤褐色→茶色の順に変わっていきます
新芽が出ていれば色の変わったヒノキゴケをカットしても問題ありません
ヒノキゴケの生育環境としては、森林の林床の腐植に生えていることが多いでしょう。
ヒノキゴケの育て方
ヒノキゴケは乾燥に弱く、湿度が十分に保てない環境で育てることが難しい苔です。
したがって、庭園や苔玉、苔鉢との相性はあまりよくありません。
逆に湿度を保ったテラリウムでは非常に育てやすく、増えやすい苔といえるでしょう。
ヒノキゴケの水やりの頻度
ヒノキゴケは乾燥に弱い苔です。
葉先がチリチリとカールしている場合は乾燥をしている状態といえます。
霧吹き、もしくは水差しでしっかりと水分を与えてあげましょう。
苔テラリウムの水やりは基本的には水差しを使用し、月に1回から2回程度でかまいません。
ですが、苔のみがエアコンの風などにより乾燥してしまっている場合があります。
その際は霧吹きを使用し、苔にのみ水分を与えてあげてください。
ヒノキゴケの葉が多少カールするくらいは問題ありませんが、細かくきつくカールしてしまうと戻るまで時間がかかります。
場合によってはそのまま枯れてしまう場合もあるため、太陽光、照明の当て過ぎには注意しましょう。
テラリウムでのヒノキゴケの育て方
クローズドタイプ(密閉)の容器でも、比較的徒長しにくいため、育てることができます。
苔むすびではセミオープンタイプ(半解放)の容器で苔テラリウムを作ることをおすすめしています。
植え方によってはオープンタイプ(開放)の容器でも育てることができますが、植え付けや管理が難しくなるため、あまりおすすめしません。
肥料なしでも2年ほどは順調に育ちます。
3年目に入ってくると新芽が出にくくなり、徐々に衰退していきます。
3〜6ヶ月に一回程度、薄めの液体肥料をあげるとより長く、元気に育てることができます。
後述しますが、ヒノキゴケの新芽は秋〜冬頃から茎の途中から分枝する形で生え始めます。
この時期の新芽は小さく目立ちません。
新芽を植える際に切り落としてしまうと、その後また新しい新芽をつけるまでに時間がかかります。
なるべく新芽を切り落とさずに取り出して、親株のヒノキゴケの近くにピンセットで仕込んであげてください。
若い新芽は、親株から割くようにして取り出し単独で植えてもしっかりと育ってくれます。
新芽は茎がツルツルしているので、細いピンセットで一本ずつつかみ、植えてあげてください。
ヒノキゴケの植え付け方
購入したヒノキゴケには土やゴミがついていることが普通です。
しっかりと洗浄をし、土やゴミを落としてください。
(当店ではしっかりと洗浄、殺菌、殺虫したものを苔パックに詰め販売しています)
ヒノキゴケは比較的大きな苔なので、しっかり安定させるためにも植え付ける際は土の中に1cm程度は茎を差し込むように植える必要があります。
太めのピンセットで束で植えることもできますが、苔の方向性などを合わせることが難しい場合は、細いピンセットで一本ずつ丁寧に植え込んだ方がよいかもしれません。
また、秋〜冬にかけて出てくる新芽は、なるべく切り落とさずに取り出します。
そして親株のヒノキゴケの近くにピンセットで一本ずつ仕込んであげてください。
若い新芽は、親株から割くようにして取り出してもしっかり育ってくれます。
親株とは違う明るい緑色のヒノキゴケが元気に成長してくれるでしょう。
ヒノキゴケに似たコケ
ヒノキゴケに似た種類の苔に「ヒロハヒノキゴケ」、「スギゴケ」があります。
ヒノキゴケに似た苔:ヒロハヒノキゴケ
ヒロハヒノキゴケはヒノキゴケよりも少し小ぶりな印象があり、また胞子体の出る場所が少し違います。
ヒノキゴケは茎の途中から胞子体が出ますが、ヒロハヒノキゴケは茎の基部から胞子体がでるので、そこで区別ができます。
苔の聖地とも呼ばれる屋久島に行くと、ヒロハヒノキゴケが至る所に見られます。
ヒノキゴケは林床(森の中の土のある場所)に生えることが多いのですが、屋久島ではヒロハヒノキゴケが樹幹(木の幹)にびっしりと生えているところととてもよく見ます。
映画「もののけ姫」の背景画でも、ヒロハヒノキゴケが生えているような描写が見られるので、探してみてください。
ヒノキゴケに似た苔:スギゴケ
ヒノキゴケとよく間違えられるコケとして、「スギゴケ」があります。
スギゴケにもさまざまありますが、最もメジャーなウマスギゴケを例に挙げると、ウマスギゴケが直立して上に伸びるのに対し、ヒノキゴケは茎を湾曲させ、コロニー全体が丸みを帯びるような生え方をします。
結果、ふわふわと動物の毛並みのような触り心地になります。
また、茎や葉の硬さも大きく違い、ウマスギゴケは非常に硬い一方、ヒノキゴケはかなり柔らかく繊細です。
ヒノキゴケFAQ
Q:ヒノキゴケの葉先が茶色っぽくなってきたけど大丈夫?
ヒノキゴケの茎葉は基本的に一年ずつ更新していきます。
言い換えると、テラリウムに生えているヒノキゴケは徐々に老化して枯れていきます。
老化の場合、全体が徐々に茶色っぽく枯れていくこともありますが、基本的には、先端から茶色く(黄色く)なっていきます。
テラリウムのヒノキゴケが枯れてきた!と、よく問い合わせがありますが、こういった老化による場合が多いようです。
ヒノキゴケは一度老化してしまったら終わりか?というと、そんなことはありません!
株が元気であれば、下の方からツンツンとした新芽が育ち、やがて新しい葉が開き置き換わっていきます。
焦って抜いたりカットしないようにしてくださいね。
Q:茶色くなったヒノキゴケの葉先は切ってよい?
老化が始まり、先端が茶色くなってきたヒノキゴケ、気になるようでしたら茶色い部分を切り取っても大丈夫です。
ただ、茶色い部分を切るつもりが、下から生えてきた新芽を一緒に切ってしまう、なんてことがあったりするので、その点は気をつけてください。
繊細な作業でもあるので、先の細いハサミを使うと作業がしやすく「新芽を切ってしまう」というトラブルも起きにくいと思います。
Q:葉が一気に茶色くなった、基部から茶色くなった
先端から徐々にではなく『一気に茶色くなった』あるいは『基部から茶色くなってきた』という時は、菌にやられている可能性があります。
ベンレート(1000倍希釈)をしっかりかけて殺菌してあげましょう。
早めに対応すればまた元気になってきてくれるはずです。
ただし茶色くなった部分がまた緑色になることはありませんので、新しい苔を購入して植えてあげるなどの対応が必要です。
Q:どうしたらヒノキゴケを着生できますか?
ヒノキゴケは茎から仮根が出やすい苔です。
茎から葉がみっしりと生えている状態だと、茎と基部が接触しないため、ほとんど着生させることができません。
着床させる基本は「茎と基物を密着させる」ことです。
ですので、ヒノキゴケの葉を葉の付け根から細かく切り取ってあげて、茶色い茎の部分が露出した状態にします。
これを基物に密着させることでヒノキゴケを着床させることができるのです。
この時、やはり基物に置いたでけでは密着が足りないため糸やモビロンバンド等でしっかりを密着させてあげることが重要です。
あとは湿度をしっかり保ってあげればそれほど難しくなく着生してくれます。
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