苔の種類と容器の選び方
苔を育てる上で、実は苔の種類と容器の形の相性というのがとても大事になります。
長くなりますが、これから苔を育て始める人は必読です!
苔テラリウムの容器タイプ(栽培スタイル)
苔むすびでは大きく3つの容器(栽培スタイル)を提案しています。
①クローズド式:蓋の閉まった、密閉容器(で育てるスタイル)
②セミオープン式:容器と蓋の間に隙間のある、密閉しない容器(で育てるスタイル)
③オープン式:容器の蓋がない、横に大きな穴がある、開放度の高い容器(で育てるスタイル)
このうち③は育て方の技術、屋内環境、水質等によりちょっと難しいため、基本的には①か②をおすすめしています。こちらでもこの①、②について詳しく説明します。
まずはクローズド式と、セミオープン式の容器を紹介します
↓クローズド式のガラス容器(密閉)
↓セミオープン式の(半開放)
容器にある程度通気があるかどうかで、クローズドか(セミ)オープンか判断します。
蓋があるかないか、ではないですよ。
見えにくいですが、セミオープンの方には蓋と本体の間にちょっと隙間を作っているんです。
こんな小さな隙間で、そんな変わらないでしょ?と思いますよね?
ですが実は苔にとっては、はっきり言って、
全く別物です
密閉するかしないかというのは致命的に違います。育ててみればわかります。
クローズドテラリウムの デメリット
では、何が違うのか。
クローズドテラリウムは常に湿度100%をキープします。
苔は基本的に湿度を保つと元気になる物がおおいので、一見非常に良いように見えます。苔も少なくとも当分は良い感じに育ちやすいです。
ですが、湿度が常に100%というのは、自然界では普通ありえないんです。基本的には湿度の好きな苔ですが、これは相当極端な環境です。こういった極端な環境では、実は色々と弊害が起こってしまします。
例えば、
・ヒョロヒョロと上に伸び始める:徒長
・茎だけ妙に伸び、枝分かれしない。大きく葉が開かない。新芽が出るが開かない:分枝・展開抑制
・糸上の仮根がいたるところから出てくる(普通は土についているところだけに出る):仮根の過剰発生
・葉の色が抜けてくる:脱色
写真で見てみるとわかりやすいです。
まずはテラリウムによく使われるオキナゴケの写真です。
これをテラリウムで育ててみました。
商品説明用の写真なので、いろいろ書いてありますが、左はセミオープン、右はクローズドで育てました。
左は、伸びずに密で、オキナゴケ本来の形で育っている一方、右の方はボサボサと荒い感じに伸びてしまっているのがわかるでしょうか。
もちろん、右の方が長く育てているわけではありません。
たった2mmの隙間の違いですが、これだけ差がでます。
そしてこちらは、シノブゴケ の写真。
これをテラリウムで育てると。。。
さらに劇的に違いがわかると思います。
繰り返しますが、同じ苔を、容器を変えて育てただけです。
右のクローズドでは、
・苔がヒョロヒョロ伸びるだけでなく
・シノブゴケらしい繊細な枝分かれもなく
・ところどころから茶色い仮根が出ている
ことがわかると思います。
極端に違いがでる種類を選んだわけではなくて、
多くの苔はクローズドテラリウムで育てると、右のようになってしまいます。
ちなみに、シノブゴケ はかなり徒長しやすい苔なので、多少の隙間ではやはり徒長し気味になります。
クローズドテラリウムに向いた苔
ですが、クローズドテラリウムでも、綺麗に育ちやすい苔もあります。多少形が変わることもありますが、それはそれで美しいと言える種類を挙げると
・ヒノキゴケ
・タマゴケ
・オオシラガゴケ
・ツルチョウチンゴケ
・ムチゴケ
・ホウオウゴケ
このあたりの苔はかなりオススメできます。
ヒノキゴケ
タマゴケ
オオシラガゴケ
ツルチョウチンゴケ
ムチゴケ
・タチゴケ
・ホソバオキナゴケ
あたりも可と思います。記事の最初の方で写真を示したように、徒長気味にはなりますが。
タチゴケ
ホソバオキナゴケ
ちょっとコツが必要なこともありますが、
・コウヤノマンネングサ
・カサゴケ
も、まずはクローズドもよいかもしれません。
ただ、特にカサゴケはクローズドでは新芽が開かないのが普通ですが。。
コウヤノマンネングサ
カサゴケ
クローズドテラリウムのメリット
さて、さんざん、クローズドテラリウムのデメリットを書いてしまいましたが、メリットもあります。というか、
初めてテラリウムを「作る」のであれば、まずはクローズドがオススメです。
・高湿度で維持されるので、植え付けが適当でも大丈夫。
極端に言うと、植えずに土から浮いた状態でもなんとかなったりします。
「苔を土に植える」って結構難しい作業のことも多いので、このメリットは大事です。
・葉の先端が傷むようなことが少ない
乾燥ストレスがかからない環境なので、葉の傷み、は起こりにくいです。
そういう意味では、育て方の「コツ」がいらないような気もします。
また、育ちが早いので、見ていて楽しいかもしれませんね。
・水やりがほとんどいらない
容器の密閉の強さにもよりますが、本当に密閉の強いものだと、1年間水いらず、ということも。
苔むすびのクローズドテラリウム容器は、実は意図的に微妙に通気するようになっている(※)ので、1ヶ月に2回程度の霧吹きを目安としています。
(※)密着しない蓋を使用。ガラス内が曇ったり、極端に徒長するのを防げます。
霧吹き
つまるところ、大事なのは苔の種類選び
です。
種類さえ選べば、クローズドテラリウムはありですし、苔むすびでも初心者向けのワークショップはクローズドで作ってもらっています。
商品も自信を持って提供できるクローズドテラリウムをラインナップしています。
セミオープンテラリウムのポイント
さて、一方、セミオープンテラリウムですが、慣れれば多くの苔はこのスタイルで健全に育てることができます。
今回は長くなすぎるので、手短に説明しますが、
重要なのは苔をしっかり植え付けること
基本的には、
立つタイプの苔は
・しっかり土に挿す。
・背丈を低めに植える
・なるべく背丈を揃える
這うタイプの苔は
・しっかり寝かせて土に密着させる
背の高い苔は
・十分に深い容器を使う
そう、植え付けにが少々コツと慣れが必要です。
ですので、苔むすびの教室では、苔の植え付けからしっかり慣れてもらうようにしています。
逆に植え付け作業に慣れればなんでもできますから。。
水やりについては、一応目安は1週間に1度程度、水差しでとしています。
クローズドテラリウムもそうですが、テラリウムの水やりというのは本当に目安です。
特に私は水やりが超適当で、店頭の苔もちょいちょい干からびています…が、苔は基本干からびても問題ないので、その時はしっかり、水をあげればいいのです。
「干からびたら苔は死ぬ」は一部の例外的な苔をのぞいて、都市伝説ですから。
長くなりましたが、苔の種類と容器の相性はとっても重要で、ここで間違えると、どうしたってうまく育ちません。
そしていったんクローズドで育てた苔を、突然オープンに戻すと傷みやすくなります。
(ですので、その時はやり方があります)
最低限のことをこちらにまとめましたが、より深い内容、細かい内容については、おいおい、書いて行きたいと思います。